太田 敏彦
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『身体にはたくさんの関節がある』というのは、いちいち言うまでもないことかもしれません。
私たちは、関節があるおかげで、動くことができます。
そして関節の中でも、股関節と膝関節は、特に痛めやすい部位です。
その理由は、重力がかかるからなんですね。
体重を支えなければいけないので、他の関節と比べるとどうしても痛めやすい場所になります。
実際、この2つの関節は、人工関節を入れなければいけなくなる人も多く、人工関節に置換する手術は、年々増加傾向にあります。
ですから日常生活やランニングなどの運動時のちょっとした膝の痛みも、あまり軽視しない方がいいでしょう。
そこで、今回は、どのように膝を鍛えていくのか、パーソナルトレーナーとしての見解と一人でもできるセルフトレーニング法をご紹介していきます。
膝を痛めた人がよくやってしまう間違ったトレーニング
膝を痛めた人は、つい膝周りの筋肉を鍛えようとする傾向にあります。
膝周りの筋肉で特に代表的な筋肉は、『大腿四頭筋(太もも前側)』という筋肉です。
ご覧の通り、膝にくっついています。
この筋肉が弱いから、膝が痛むと考えてしまい、一生懸命この筋肉を鍛えようとするんですね。
例えば、フィットネスジムではこんなトレーニングマシンがあります。
上の写真のように、膝を曲げて座った状態から、膝を伸ばしていくマシントレーニングです。
この膝を伸ばしていく動作にトレーニングマシンの負荷がかかってくるんですね。
ですから、膝を伸ばすときに、この大腿四頭筋(太もも前側)の筋肉をトレーニングすることができます。
もちろん、こういったトレーニングマシンを使わなくても、普通の椅子に座って、膝を伸ばすだけでも、この筋肉をトレーニングすることはできます。
多少負荷は弱まってしまいますが。。
病院でもよく膝周りの筋肉を鍛えることが推奨されるようですが、『膝が痛いから膝を鍛える』『腰が痛いから腰を鍛える』ということでは、なかなか改善は見込めません。
なぜなら膝の痛みの原因は、膝周りの筋肉が弱いからだけではないからです。
正しく原因を見極めないと解決はできません。
もちろん、原因は人によって変わってくるので、ここで「原因はこれですよ!」と言うのは無責任な発言になってしまいます。
ただ、少なくとも確実に言えることは、膝を曲げたり伸ばしたりして、膝まわりの筋肉を鍛えることは、膝を悪くする可能性が高いということです。
なぜなら膝を動かす運動をすればするほど、膝だけを動かすという動作に身体が慣れてしまいます。
少しだけ想像してみてください。
私たちの普段おこなう動作というのは、膝だけではなく、いろいろな関節をうまく連動させて行なっています。
歩いたりするのも、走ったりするのも、膝だけが動くということはありませんよね。
膝だけの運動ばかりしていると、膝ばかりを意識した動作パターンが身体の中で作られてしまいます。
そうすると、普段の立ったり座ったりする動作さえも、本来は股関節をもっと使ったり、他と連動させなければいけないのに、股関節を使わなくなり、膝ばかり使ってしまうので、よけいに膝を痛めてしまいます。
このように膝を鍛えるトレーニングというのは、膝を良くするどころか、膝を悪くする可能性が高くなってしまいますので、お気をつけください。
補足しておくと、意外とジムのトレーニングマシンは、日常生活の動作には役立たないことは多いので、できることならフリーウエイトでのトレーニングなどが最終的には、オススメだったりします。
ジムのトレーニング効果を高めるために知っておきたい5つのこと
膝の痛みを引き起こす2つの原因
では、膝の痛みの原因は、何でしょうか。
膝の痛みを引き起こす主な原因を2つあげるなら、『股関節』と『骨盤』です。
この2つの影響は、とても大きいです。
『股関節の使い方』や『骨盤の歪み』などは、膝の負担度合いに大きく影響してきます。
骨盤が歪んでいると、膝にも影響するのは、何となくイメージはしていただけるのではないでしょうか?
こんな写真のイメージでしょうか。
この写真では、太ももがねじれるパターンを表した図で、骨盤は歪んでいないのですが、歪んでいるとさらに膝が悪くなるのは、想像しやすいかと思います。
ですから、骨盤周りの筋バランスを整えることも、膝の痛みを改善する上で大切です。
では次に、股関節の使い方が、膝に影響するというのはどういうことでしょうか。
この動画は、タイトルは変わりますが、なぜ股関節が使えていないと膝を痛めるのか、股関節を使うというのはどういうことなのか、実演を交えて解説しています。
ぜひ一度ご覧ください。
一応、ここでも簡単に解説しておきますね。
股関節というのは、このようにすごく動きやすい構造になっています。
しかし、この股関節が動かないと、その分他の関節を動かさなければいけなくなり、負担が大きくなります。
たいていは、股関節が動かない分の負担を膝が受けなければいけなくなります。
だから、スクワットみたいな立ち座り動作で、股関節が動かない場合、より膝が動かなければいけなくなり、膝の負担が大きくなります。
車に例えるなら、膝に痛みがある状態というのを、タイヤに問題がある状態(パンクしているなど)だとして、膝を鍛えるという発想は、タイヤをより良いものに替えようとすることと同じです。
これは、一見よさそうに見えるのですが、なぜタイヤに問題が起こったのか考えなくてはなりません。
もしかしたら、車のフレーム(骨盤)に歪みが生じていて、タイヤ(膝)に痛みが生じたのかもしれませんし、ハンドリングスキル(股関節の使い方)が悪くて、タイヤに負担が集中したのかもしれませんよね。
この例えで、わかりますか?
ですから、タイヤをいくら新しいものに替えたとしても、他に原因があれば、すぐにそのタイヤは壊れてしまいます。
だから、膝の痛みを解消しようと、膝のトレーニングで鍛えるのは、お勧めできないことが多いんですね。
こちらの動画で、そのあたりを詳しく解説しています。
お時間あるときにどうぞ!
膝を痛めた人がやっておきたいセルフトレーニング
さて、膝をトレーニングしようとすること自体があまり効果がないことだというのは、気づいていただけましたか?
では、膝に負担がかからないようにトレーニングしたいときは、どうすればいいのでしょうか。
上記で紹介した2つの原因にアプローチすることです。
つまり、『膝まわりの筋肉』を強くするのではなく、『骨盤周りの筋肉』をトレーニングしたり、ストレッチをすることでバランスを取っていきます。
例えば、上の写真にある、真ん中のいわゆるO脚の場合は、内腿(内もも)の筋肉が使われなくなっていることが多いため、トレーニングをしていくことが有効です。
そして、下で紹介するトレーニングは、内腿の筋肉を鍛えるのには、最適なトレーニングになります。
横向きで寝た状態で、上側の足をかぶせて、おへそを真横よりは、やや下側に向けて、セットポジションをとります。
そこから、下側の足を真上に、あげていきます。
これを繰り返していくことで、内腿の筋肉を鍛えることができます。
また、写真の右側のいわゆるX客の場合は、お尻の筋肉が使われなくなっていることが多いため、内ももではなくお尻のトレーニングを取り入れていきます。
写真のように横向きで寝た状態で、両足を揃えて、膝を少し曲げます。
ここから貝のように膝を開いていく動作です。
このトレーニングは、臀部(お尻)の筋肉をトレーニングすることができます。
これは、あくまで一例ですが、骨盤の状態によって、トレーニングメニューは全く違うものになります。
では、次に股関節を使えるようにするために、一人でもできる簡単な体操をご紹介していきますね。
それは、こちらの体操です。
このように四つん這いの状態がスタートポジションです。
ここから、お尻をゆっくり後ろに引いていきます。
この動作を行なうことで、自然と股関節を使うようになります。
ただし、注意点として、下の写真のように腰が丸まってしまうと、股関節ではなく、腰が動いていることになってしまいます。
股関節を動かして、身体が本来持っている自然な動作を引き出すのが目的の体操なので、注意してくださいね。
膝を鍛えることの目的を見直すことが大切
さて、いかがだったでしょうか。
膝に違和感がある人は、膝を鍛えた方がいいのかな?と思ってしまいがちです。
しかし、膝を鍛える目的というのは、膝の負担をなくして、膝の痛みをなくしたりすることが目的ではないでしょうか?
ただ、膝周りをトレーニングでいくら鍛えても、膝の負担をなくしたり、膝の痛みを改善することはできません。
そのため、今回は、膝の負担をなくしたりするトレーニングや体操などをご紹介しました。
上でも書いた通り、膝を鍛える前に、なぜ膝を鍛えた方がいいと思っているのかを見直すことがとても大切です。
そして、膝に痛みなどの違和感があるのであれば、その原因を正しく見極めていかないといけません。
ただ闇雲に、膝周りの筋肉を鍛えることに固執してしまうのは、かえって悪くしかねないので、ぜひ正しいアプローチで続けていってくださいね!
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